和の森法律事務所

改めて 民法の成年年齢の引き下げを考える(2)

 選挙年齢を18歳に引き下げた改正公職選挙法による最初の国政選挙が行われました。

 他方、民法の成人年齢の引き下げについて、日本弁護士連合会は、本年2月18日に「慎重であるべきである」との意見を発表し、6月25日にシンポジウム「民法の成年年齢の引き下げを考える~消費者の視点から~」、7月9日に、「若者の消費者被害と未成年者取消権のあり方について」と題するセミナーをそれぞれ開催しています。

 日弁連が引き下げに慎重な意見を述べている理由の一つは、民法の成年年齢は未成年者取消権が認められる年齢としての意味があり、若者の消費者被害の現状に鑑みると、高校さえ卒業しておらず、社会経験の極めて乏しい18歳の若者が、無防備に社会に放り出されれば、消費者被害を受ける若者の年齢層が下がることが明らかなことから、そのような事態を阻止したいからです。

 未成年者取消権の関係で、成年年齢を子どもの側から見ると、親の同意を得ずに自由に契約をすることができることを意味します。しかし、「自由」には責任が伴います。「しまった!」と思っても、契約をした以上は、原則として、その契約に拘束されることになります。

 また、成年年齢は、親が子の監護及び教育をする義務を免れる年齢としての意味もあります。18歳で成年となった若者が大学で学ぶ費用の負担をどうするのかを考えることになります。

 現在でも、20歳未満の若者が婚姻をすれば成年として扱われ、親の監護からはずれ、未成年者取消権の保護を受けられなくなり、『大人』として扱われますが、成年年齢の18歳への引き下げは、18歳になれば、そのような意味で『大人』として扱うということを意味しています。

 昨日のセミナーで、京都産業大学大学院法務研究科の坂東俊矢教授から、未成年者保護法理は、「近代史民法」としての民法の基本原理だと説明されました。世界中のどの国でも、成年年齢を定めています。それは、市民社会の一員として平等に扱われる年齢であり、成年年齢の引き下げは、グローバル化の流れのなかで、避けて通れないのではないか、とのことでした。

 他方、より高度な複雑化した社会において、成年年齢を引き下げて社会経験に乏しい若者を未成年者取消権の保護から外すとすれば、成年に達するまでに大人として行動するに相応しい消費者教育を提供することはもとより、未成年者取消制度以外にも、現在、成年年齢がどのような意味を持っているのかを改めて確認し、それぞれの適用場面において、必要な制度を検討していく必要があると思います。

 

 

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